2020/04/17 18:03

皆さん、こんにちは。

着物デザイナーの木越です。
今回のブログはかなり業界に踏み込んだ話ですぞ!



外出自粛要請が出て数日が経ちました。
皆さん、それぞれ様々な過ごし方をしていることと思います。


コロナで世の中は変わっていくでしょう。


なんちゃって偉そうに言いましたが、なんとなく本当にそう思えますよね。
どう変わるのか、偉い人のご意見を読んでいると全てそんな気がして来ちゃいます。

細かいことはわからないけれど、何となくざっくり感じることは、、、


きっと、モノを買うという考え方が変わる


と感じています。

そんな中、着物というモノはどうなっていくのだろうと考えたときに真っ先に思う事がこれ。



そもそも着物ってそんなに高いですか?



いつも思うのです、これ。


美容院に行くとファッション誌には靴が10万円、バッグが40万円、コートが60万円、、、!!
びっくりするほど、高い!!
みんなこんなに高いモノを買っているの?流行りのある洋服の世界でこの値段を買えるの?

着物はゆるやかな流行はあるけれど、長く着られることが魅力の一つでもある。
もちろん、着物は高いものは高い。100万円なんてザラで、高級外車が買えるくらいの高価なモノもたくさんある。

だけど、ワンピースを買うくらいの感覚で買える着物もとてもたくさんある。
例えば仕立て上がりで、浴衣で3万円くらい。着物でも8万円くらいなら全然普通にたくさんある。
ちょっとしたブランドでワンピースやスーツを買うのと同じくらいだ。

なのに「着物は高い」と言われちゃう。

このイメージをつけたのは何を隠そう昭和の呉服業界そのもの。
困ったものだ。

その頃の消費者はとにかく「買いたい、所有がしたい」という欲求を、美術品を売るかのような呉服屋の売り方の言いなりになり、着もしない高価な着物を買いまくったのだ。
その時代のことを古い呉服屋さんは「良い時代だった」と言いますが、それはそれは高いものが売れたそうです。


高い方が売れる。。。そんな感じさえありました。


でもそれは長続きしませんでした。

「5年経っても着ないなら、もう着ないよ〜!」と言うバイセルのCMのように、持っていても着ない人が増えました。
だって、美術品のような着物は普段には着られないし、昭和のデザインが色濃く残り、『洋服の中で浮きまくる着物の人になりたくない』と言う人が増えたと思います。

この辺りから、呉服屋の売り方を考え直さなければいけなくなってきました。
昭和の時代に儲けたくせで、たくさん在庫しているのに売れなくなってしまったのです。

すると、呉服屋は叩き売りをし出します。
本来の着物の価値を忘れ、目先の収入欲しさに安く売る。
そんな事をすれば、回り回って職人にお金がいかなくなるというのがわからなかったのでしょうか。。。

私が呉服業界に入って20数年が経ちますが、多くの技術が途絶えました。復活はできません。
それを食い止めるには、職人に正しくお金が支払われ、お客様が適正価格で買うということの繰り返しが重要です。


だから、これから大切なのは。。。



着物を安く買って喜ぶのはもうおしまい!!



ってこと。


では「着物を安く買う」と言うのはどう言うことかというと、、、
これがいっぱい例があります。


*店頭にポリエステルの着物が500円で売ってた。安くて嬉しい!

*ワゴンセールで帯締めが1,000円で売ってた。やったー!お買い得!

*ネットで着物が1万円だったので買った。デニム着物って安いのね!

*お店で買うか悩んでいた着物が「お客様だけ特別に」って言われて何万円、何十万円も値段が安くなって買えた。私は特別!

*着付け教室に行ったら色々と買うことになったけど安かったみたい。嬉しいわ!

*メルカリで大島紬がめちゃ安く出てた!買いだわ!



はい。それぞれに解説していきましょう。


*店頭にポリエステルの着物が500円で売ってた。安くて嬉しい!
ポリエステルの着物は安物のように言われますが、世界の最高峰ともいえる日本の化学繊維メーカーが生地を制作している場合もあり、一概に安いとは言えません。それに生地、染め(例えインクジェットでも)、縫製という分野で関わっている人たちに500円でどうやって賃金が支払われるのでしょう?
こういう販売方法は、この500円着物は捨てているようなもので、寄ってきた人の名前と住所が欲しい「名簿取り」であり、その後に高額な商品を売りつける方法です。

*ワゴンセールで帯締めが1,000円で売ってた。やったー!お買い得!
こちらも上記と似たような事です。帯締めは中国でも作られています。中国だから悪いということはありませんが、日本で制作するより労働賃金が安い国で制作していた名残りです。もうそろそろ、中国も値段が変わらなくなっていますが。
こういう商品はメーカーから数百円で買取り、客寄せパンダにしますが、本来奥にあるお高い商品の値段が無闇に釣り上がる要因でもあります。

*ネットで着物が1万円だったので買った。デニム着物って安いのね!
デニム着物も安いイメージで言われがちです。
私は『着物屋くるり』のデザイナーでした。そのくるり時代に多数のデニム着物を開発しましたが、どの生地も「着物の特性に合ったもの」を選べば生地値は安くありません。
オリジナルのデニム生地を制作したときなんて、絹ほどではありませんが、それなりに値段がかかります。
縫製にも正しく支払えば、デニム着物が1万円で販売できるわけがないのです。
もし、それが可能ならそれは何千枚と同じものを制作していると思います。

*お店で買うか悩んでいた着物が「お客様だけ特別に」って言われて何万円、何十万円も値段が安くなって買えた。私は特別!
いまだにこのような事が多いです。
すべてがダメだなんて言いません。誂え(オートクチュール)の世界、高級な商品の世界には存在します。
ですが、総原価(職人に支払った金額や生地代の全額)が10万円だったものが値札には350万円となっていて、話しているうちに180万円になって、おまけに帯がついてきた。。。なんて商売おかしいと思う。
この末端価格は職人には知らされない事が多いのも問題です。
その商品が適正価格で販売され、喜ばれ、また買って貰えば職人の仕事が増えるのです。
「350万円だったものを180万円で買えた」ことを喜ばないでください。ただ単に最初に意味のない高値が付いているだけです。

*着付け教室に行ったら色々と買うことになったけど安かったみたい。嬉しいわ!
これも全てだめとは言いません。
私は着付け教師とも仲が良く、本当に生徒さんや弟子のことを考えて販売されている先生はたくさんいらっしゃいます。
ですが、無料でスタートし、途中途中で高額な着物を買うのにローンを組まされ、それを買わないと先生と仲良くさせてもらえず、だんだん教室が遠のく。。。なんてのは未だにあるようです。
そういうお教室も大体「今なら安い」「この展示会は特別だから」と安いかのように思わされて買わされちゃいます。

*メルカリで大島紬がめちゃ安く出てた!買いだわ!
あ〜も〜これは太刀打ちできない。これは消費者同士の古着のフリーマーケットのようなものだから。
もちろんだめとは言わない。個人の自由です。
ただし、メルカリで買っても職人には1円も入りません。
大島紬の現場は時給180円くらいだと言われているほど、年金生活者の労働に頼っています。
ある程度メルカリで着物を楽しんだら、ぜひ新しいものにチャレンジして欲しい!!



ここまで赤裸々にお話ししたらお気づきのことと思います。


安く買ったら職人にお金が入らないのです!!


もう値段競争の時代じゃない。


ちゃんとしたものをちゃんとした価格で売りたいし、買っていただきたい。



私の周りには「ちゃんとした呉服屋」がたくさんあります。
私自身もブランドを持っていますので、自分の利益になるのももちろん大切ですが、常に呉服業界全体のことを考えています。



なので立ち上げます!

私が自信を持ってオススメする「本当に欲しい着物」をYouTubeで配信します!

それは、全国各地の素敵な着物や帯、小物。


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リアルクローズとなる着物を


理由のわかるお値段で

愛せるように着物を知って買う


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ただいま準備中!

少しだけお待ちくださいね!!



長いブログを最後までお読みくださり、本当にありがとうございます❤️


着物デザイナー
木越まり

↓下の画像は2020年加花-KAHANA新作ゆかたです。。。いつ販売できるかな。。。